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第5回口頭弁論・詳細(2)


修復腎移植訴訟 第5回口頭弁論・詳細(2)

2010.5.11(火)


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平成20年第979号損害賠償請求事件
原 告  野 村 正 良  外6名
被 告  大 島 伸 一  外4名

準備書面(7)

2010年4月13日
松山地方裁判所民事第2部  御中

原告ら訴訟代理人
弁護士  林     秀  信

弁護士  岡  林  義  幸

弁護士  薦  田  伸  夫

弁護士  東     隆  司

弁護士  光  成  卓  明

弁護士  山  口  直  樹

 原告らは、準備書面(2)において、「修復腎移植が治療行為として妥当か否かが本件訴訟の重要な争点であり、原告らとしては、本件訴訟においてかみ合わない議論をすることを望まない」旨主張して本件訴訟の争点を提示した。そして、本件訴訟が提起されて約1年半が経過することから、修復腎移植の治療行為妥当性に関して、これまでの主張・立証を別紙のとおりまとめることとする。


別紙「修復腎移植の治療行為妥当性に関する主張・証拠対照表」  




平成20年(ワ)第979号損害賠償請求事件
原 告  野 村 正 良  外6名
被 告  大 島 伸 一  外4名

準備書面(8)

2010年5月7日
松山地方裁判所民事第2部  御中

原告ら訴訟代理人
弁護士  林     秀  信

弁護士  岡  林  義  幸

弁護士  薦  田  伸  夫

弁護士  東     隆  司

弁護士  光  成  卓  明

弁護士  山  口  直  樹

[ 被告ら準備書面(4)について ]

1 被告らは、準備書面(4)において、乙第37及び38号証を根拠として、本件訴えに法律上の争訟性がない旨主張しているので、以下、両書証に沿って、被告らの主張に理由のないことを明らかにする。

2 乙第38号証
ⅰ 乙第38号証は、東京地判平成17年10月26日の判決文である。
被告らは、同判決が、「学問上の見解の当否や評価が「不法行為に基づく損害賠償請求の前提事項となった事件に関し、被告の主張である、これ等の問題は教育の場で議論されるべきものであり、司法審査の対象として訴訟手続に於いて確定すべきものではないとの主張を採用し、『そもそもかかる事情は司法審査の対象として訴訟手続において確定すべきものではない』と明確に司法審査の対象とはならないことを判示している」と主張する。
 ⅱ しかるに、被告らの前記判決の引用は誤っている。乙第38号証判決の「事実及び理由」によれば、
ア 乙第38号証判決の事件は、大学入試センター試験の世界史の問題(同事件では日本史の問題についても争われているが、被告の引用する部分は世界史の問題について述べられている部分なので、さしあたり世界史問題についてのみ述べることとする)として、第二次大戦中の「強制連行」についての設問を出題したことについて、これが受験生である原告らに対する不法行為に該当するとして提起されたものである。
イ 同事件の原告らは、①同問題は歴史的事実でない「強制連行」を受験生に押しつけようとする思想チェックの問題であり、②かつ「強制連行」は定義が曖昧で問題自体不適切な偏向した問題なので、③その出題は裁量権の範囲を超え、原告らの思想良心・学問の自由を侵害する、と主張した。
ウ これに対し被告は、①出題は被告の裁量権の範囲内である、②「強制連行」が史実かどうかについての学問上の見解の当否や評価は「教育の場で議論されるべきものであり、司法審査の対象として訴訟手続に於いて確定すべきものではない」、と主張して、請求棄却を求めた。
エ 東京地裁は、
① センター試験の出題者には一定の裁量が認められる。
② センター試験の目的は高校段階での基礎的な学習の達成度を判定することにあり、受験生にとって公平かつ公正に実施されることが求められているので、その目的に反するような不合理な問題作成をした場合には、裁量の範囲を逸脱したものとして違法性が認められる。
③ 「強制連行」は多数の高校教科書で記述されている。本件出題は、受験者が教科書等を用いて学習した知識・理解の程度を判定するべく作成されているにすぎないから、裁量権の逸脱があったとは認められず、センター試験の目的に反する設問ということはできない。
④ 本件出題の適法性を検討するにあたって、上記教科書の記載内容を離れて、「『強制連行』が史実か否かといった学問上の見解の当否や、評価について検討する必要はないし、そもそもかかる事項は司法審査の対象として訴訟手続において確定すべきものでもない」。
⑤ 原告らが本件出題に戸惑いあるいは不快感を抱いたとしても、それは単なる主観的感情であり、金銭をもって償われるべき権利・法益の侵害にあたらず、原告らの思想良心・学問の自由を侵害するものでもない。
として、原告らの請求を棄却した。
 ⅲ 要するに、乙第38号証判決は、①「『強制連行』が史実でない」という学問的な評価を前提として出題が裁量権逸脱であるとする原告らの主張に対し、②センター試験の「受験者が教科書等を用いて学習した知識・理解の程度を判定する」という目的に照らして裁量権逸脱の有無を判断し、③「強制連行」の学問的当否・評価については検討の必要がなく、かつそれは訴訟手続で確定すべきことではない、と判示したものである。そして、同訴訟では被告は請求に争訟性がないとして却下を求めてはおらず、東京地裁判決も請求に争訟性があることを前提として、「センター試験の目的に反するような不合理な問題作成をしている場合には違法性が認められる」旨判示したうえで、本案の判断をしている。
ⅳ 本件において原告らが判断を求めているのは、準備書面(5)でも主張しているとおり、「修復腎移植の科学的適否」そのものではなく、「修復腎移植を攻撃するために被告らが行った行為が不法行為に当たるか否か」である。原告らは、被告らが修復腎移植を攻撃するために、真実に反する発言等をした、と主張しているので、被告らの発言が真実に反するか否かを判断するについて「修復腎移植の科学的適否」(及びそれについての被告らの認識)は重要な間接事実になるが、「修復腎移植の科学的適否」自体は要件事実そのものではなく、また必ずしもその論理的前提をなすものでもない。
乙第38号証の東京地判は、「『強制連行』が史実か否か」という学問的な評価は、当該事件においてはセンター試験の目的に照らして問題出題の裁量権逸脱の存否を判断するための要件事実ではなく、またその論理的前提をなすものでもないと解して、請求に争訟性があることを前提にして本案の判断をしているものである。
従って、上記東京地判は、①被告らの主張の根拠になるものでないのみならず、②むしろ、「『修復腎移植を攻撃するために被告が行った行為が不法行為に当たるか否か』を判断するについて、『修復腎移植の科学的適否』は、重要な間接事実ではあるけれども、要件事実そのものではなく、また必ずしもその論理的前提をなすものでもないから、訴訟要件とは関係がない」とする原告らの主張を支持するものと言える。

2 乙第37号証について
 ⅰ 乙第37号証論文は、91Pにおいて、
ア 東京地判昭和23年11月16日(学位請求の取扱いにかかわり名誉を毀損されたとして謝罪文の掲載等が請求された事例)が、原告が被告の「回答又は答弁によって不快の念を生じたとしても、それは学問上の見解の相違から生じたに外ならず、被告等が原告の名誉を毀損したことにはならない」。もし特定の学説上の見地から「右処置の当否を判断するとすれば必然的にそれぞれの学説の方法的内容的当否の審査を必要とし裁判によりその学説の当否優劣を決定する結果を招来する。斯かることは単に妥当でないのみならず裁判所の審査権限の範囲外に属する」(被告らが準備書面で引用しているのは、乙第37号証論文の筆者が引用する東京地判の判決文の文章である)として請求を棄却したことに触れて、
イ 「不法行為に基づく損害賠償請求の成否を決するための前提問題としてその争点が提示されているという場合には、むしろ、この②の要件にかかわる問題として処理すべきことになるであろう。」と述べている。
 ⅱ ここで触れられている東京地判昭和23年11月16日は、掲載されている「行裁月報」が地裁資料室にも存せず、ネット上にも掲載されていないので、その事案・判断の全容を知ることができない。(被告らには、間接的にでも判決の文章を引用する以上、判決全文を提出していただきたいものである。)
   しかしながら、請求された事項が不法行為に基づく謝罪広告の掲載であったこと、判決の結論が請求棄却であって却下ではないことに徴すれば、乙第37号証判決と同様、請求に争訟性があることを前提として、本案の審理判決がなされたものであることは確実と推定される。かつ、乙第37号証論文の筆者も、当該判決の「請求棄却」の結論自体を非難しているとは見えない。(学位請求の取扱いにかかわる「回答または答弁」が、学説の当否にかかわりなく名誉毀損の不法行為を構成することはありえないことではないから、当然ではある。)

3 以上のとおり、乙第37・38号証によって本件請求に争訟性がないことが裏付けられるとする被告らの主張は、それ自体誤りである。争訟性がないとして被告らが引用した判例がいずれも争訟性を認めていることからも、被告らの主張はすでに破綻している。

  なお、被告らには今後、判決等を引用するにあたっては、極力原文により、かつ原文の趣旨に忠実にすることをお勧めしたい。御都合次第に引用していては、引用者の品性もしくは能力を疑われる可能性があるのみならず、よほど本案の審理に入られたくないのかな、という疑念すら抱かれかねないからである。
# by shufukujin-report | 2010-06-11 22:35 | 第5回口頭弁論詳細(2)

第5回口頭弁論・詳細(1)


修復腎移植訴訟 第5回口頭弁論・詳細(1)

2010.5.11(火)

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平成20年(ワ)第979号損害賠償請求事件
原 告  野 村 正 良  外6名
被 告  大 島 伸 一  外4名

更 新 弁 論

2010年5月11日
松山地方裁判所民事第2部  御中




原告ら訴訟代理人
弁護士  林     秀  信

弁護士  岡  林  義  幸

弁護士  薦  田  伸  夫

弁護士  東     隆  司

弁護士  光  成  卓  明

弁護士  山  口  直  樹


第1 修復腎移植の経過とわが国での表面化
    2006年10月1日に摘発された愛媛県宇和島市にある宇和島徳洲会病院をまき込んだ腎臓売買事件をきっかけとして、その調査を進めた結果、同病院で万波誠医師を中心とする瀬戸内グループの医師たちによって、11件の非親族間での腎臓提供による移植が実施されていたことが明るみに出て、これらは病気のために摘出された腎臓を用いたため、マスコミによって“病気腎移植”と呼ばれた。
    この移植は、「癌患者からの臓器移植を認めない」とする厚労省の死体腎移植ドナー適応基準や「親族間以外での臓器移植は、倫理委員会の承認なくしては原則として認めない」とする日本移植学会の移植倫理規定に反していたため、医療倫理に違反する医療、人体実験的医療などと関係医学会幹部やマスコミから一斉に非難を浴びることになった。
    しかし、医療における基準や倫理は絶対的、画一的なものでなく、現場の必要性に応じて柔軟に適用される中で、医療・医学の進歩が実現されていくものである。    
    1991年に瀬戸内グループの一員である呉共済病院の光畑直喜医師が70歳代の高齢ドナーから摘出した腎動脈瘤のある腎臓を修復して移植し透析患者を救った時、読売新聞はこれを美談として報じ、これに対する異論は出されなかった。
    2002年8月高知市で開催された中国四国臨床臓器移植研究会では、本事件で強く非難されたネフローゼ腎の移植の成功例が発表されており、これに対しても、非難するような医師はいなかった。
    被告大島は、腎動脈瘤の患者から摘出した腎の非親族間移植を移植ネットワークの責任者として認めていたし、腎臓売買事件が起きる直前の2006年9月26日に秋田大学で行なわれた母子間の癌の疑いのある腎臓の移植について、癌の腎臓の移植は禁忌といいながら被告大島、同高原は問題がないとコメントした。
    そして、瀬戸内グループのケースも含めこれらの修復腎移植手術には、すべて病気のための腎臓摘出であることを認めたうえで健康保険が適用されてきた。 
    これらの本件事件発覚以前の事実経過からすると、修復腎移植が何故、ことさらに医療倫理に反するとして、激しい非難にさらされるべきであったのか理解し難いことである。
    しかし、厚労省、関係医学会、主要マスコミはこぞって瀬戸内グループの修復腎移植に激しいバッシングを浴びせたのだった。
    そして、修復腎移植否定の既定路線にのっとって2007年3月に学会共同声明が修復腎移植の医学的妥当性を否定し、同年7月厚労省はこれを鵜呑みにして修復腎移植を原則禁止とした。

第2 患者たちの修復腎移植に対する評価
    修復腎移植は医師の業績や名声のために行なわれたものではない。その態度は医療記録さえ残そうとしなかったという瀬戸内グループの態度にも示されている。その移植は、ただ透析に苦しんでいる患者に病気のために廃棄される腎臓をリサイクル利用して、患者を救おうとする医療現場での患者と医師の苦肉の策であった。
    透析医療は、慢性腎不全患者を救う救命医療だが、その生活の質はよいとはいえない。血液の汚れや体液質の激変という点において根本的欠陥をかかえている。透析を導入すれば、10年間で60%もの患者が死亡している。一方、腎移植を受けた患者の死亡率は20%にすぎない。
    しかし、根本医療である腎移植は移植登録希望者12,000人に対し、死体腎移植実施件数は年間200件にも達しない。
    現実に移植を受けた患者の平均待機年数は15年にもなる。透析に適応できない患者は、生命を危険にさらして違法な臓器売買の疑いのある海外での移植にさえ活路を求めている。
修復腎移植を受けた患者らは、みな自らの生命が救われ、人並みの生活を取りもどしたことに感謝している。
    このように透析に苦しみ、かつ移植への希望の乏しい患者たちにとって、修復腎移植は多少のリスクがあろうとも自らの生命を救ってくれる希望の光なのである。    
    それゆえに、原告らをはじめとする患者らは、関係学会や厚労省が修復腎移植を否定、禁止した時、これに憤り反対の声をあげたのだった。

第3 明らかになってきていた修復腎移植の好成績
    修復腎移植は本来、技術のある医師にとっては、ICが十分になされるならば、ドナー、レシピエント双方にとって問題とされるような不利益はない。
    小径腎癌を切除して腎移植を行なう場合においても、前世紀の古い学説である「癌患者からの移植は禁忌」は、新しい画像診断技術や癌についての知見の進歩、免疫抑制剤の開発によって、安全で有効なものであることがわかってきていた。本件訴訟で違法としている被告らの発言等は2006年11月から2008年5月までの間になされたものだが、それ以前に2004年以降、ニコル教授18例(2007年7月では43例)、ブエル教授14例、それに万波医師ら8例、以上合計40例(65例)に、レシピエントに癌の再発・転移が一例もないことが判明していた。これらの成績は移植の機会が乏しく、余命が1、2年とされる透析患者にとっては、十分に現実の医療として妥当性を有するものというべきである。

第4 本件訴訟で問われているもの
    本件訴訟は、透析医療では生命も危ぶまれる患者らが、その救命と苦しい生活から免れるための移植を受ける権利を主張して、被告らが行なった、安全性、有効性が認められる修復腎移植を否定するための誤った事実や評価の開陳、社会への流布行為を違法な権利侵害として、損害賠償請求を求めるものである。
    そして、この訴訟の背後には、透析で苦しむ移植への希望を求める何万人もの患者の願いがあり、本件訴訟の原告らの訴えは、これを代表して行なわれているという社会的意義をもっている。
    当裁判所におかれては、本件訴訟が法的意義のみならず多くの患者に対して、彼らが生きる道を拓く社会的役割を担っていることを認識され、原告ら患者たちの声に耳を傾け、慎重に審理されることを求める。

第5 これまでの公判での争点と到達点
1、今回の第5回口頭弁論において、裁判所の構成に大きな変化があったため、原告らは新しい裁判体に対し、原・被告らの主張を明らかにし、これまでの法廷での議論の争点と到達点を示す。
2、原告らが本件訴訟で求める内容
(1)原告ら7名(うち1名の透析患者は提訴後死亡し、母親が訴訟を承継した)は透析患者あるいは腎移植を受けた慢性腎不全患者らであり、現在あるいは将来、修復腎移植を受ける権利を有している。
(2)一般的にみて、腎移植医療は透析医療よりも、慢性腎不全患者にとって必要かつ有効な医療であって、我国における移植腎の提供数が著しく少なく、その一方で腎移植を待つ多数の透析患者がいること、修復腎移植はこれまで保険適用の下で実際に実施されてきたこと、その安全性は低くはないことなどの事情の下では、修復腎移植においても、医療としてのその必要性及び有効性は十分に認められ、医学的妥当性を有している。
(3)にもかかわらず、日本移植学会の新旧の幹部である被告ら5名は、その移植医療における専門家としての地位を利用し、修復腎移植が医学的妥当性を欠くので許されないとの予断の下で、それぞれが虚偽の事実と評価の開陳を行なった。これらは、いずれも違法な行為にあたる。
(4)被告らが、違法行為を行なうことによって、修復腎移植に対する誤った事実と評価がマスコミ等を通じて広く社会に流布され、また、修復腎移植に関する学会共同声明や厚生労働省の臓器移植法運用指針に否定的評価がなされ、現実の医療として行なうことができなくなった。
(5)そのため、原告らは修復腎移植を受ける権利を侵害され、精神的損害を生じている。
よって、被告らは原告らに対し、不法行為により、その損害を賠償する義務がある
という内容の判決である。
3、被告らが答弁した内容
(1)被告らは、答弁書において、その第1の主張として本件訴えは「法律上の争訟」(裁判所法3条)にあたらず、あるいは当事者の資格を欠くので審理に入るまでもなく形式判決により却下されるべきものと主張した。
   その具体的理由としては
  ① 本件訴訟は修復腎移植の可否という高度に医学的な内容の方針そのものの可否を判断対象とするものであり、法律の適用によって解決し得ない。
 ② 原告らの主張する修復腎移植を受ける権利は、具体的な権利として認められないので、具体的権利関係の存否を判断するという訴訟の前提を欠く。
③ 原告らが臓器移植法のガイドライン改正により、修復腎移植を受けることが不可能になり、権利侵害が発生したと主張しているとの解釈を前提として、被告らは権利侵害はガイドラインの変更を行なった国を本来の被告とすべきであり、本件被告らは当事者となりえない。
   とする。

4、形式(却下)判決を求める主張に対する原告らの主張
(1)原告らは、被告らの①の主張(高度な医学的内容に関する紛争)に対し、
ⅰ 修復腎移植問題発生からのこの問題に対する被告らの発言・態度を具体的に示し、被告らは高度に医学的問題であるからではなく、予断に基づいて「修復腎移植まず否定ありき」の主張をくり返してきたこと
 ⅱ 実際に医学的論争がなされた形跡はなく、被告らは自ら執筆した論文や公的な場での発言において、自らに不都合な事実を隠蔽し、争点を回避しており、とうてい高度な医学的内容が問題となっているとはいえないこと(原告ら準備書面(4)第2)。
 ⅲ たとえ、本件修復腎移植問題が高度な医学的内容の方針にかかわる紛争であるとしても、そのような判断は、通常の医療過誤訴訟において判断の対象にされており、高度に医学的な内容の方針そのものの可否が判断の対象に含まれることは、法律上の訴訟性を欠くことにはならないこと
 を反論した(原告ら準備書面(5)3)。
(2)つぎに、被告らの②の主張(具体的権利性を欠く)については、原告らは被告に対する具体的な損害賠償請求権の存否について、裁判所にその判断を求めており、明らかに具体的権利を主張している。
    その権利が実体法上認められるか否かは、裁判所が審理を経たうえで判断すべきことであって、形式判決で終結させるものではないことを明らかにした(原告ら準備書面(5)2)。
(3)被告ら③の主張(被告は国とすべきで、本件被告らには当事者適格がない)については、原告らの主張は、被告らの違法な発言や意見を広く社会に流布する行為自体が原告らの修復腎移植を受ける権利を侵害したものとの主張も含むのであって、被告らの当事者としての責任を問うているのであるから当事者適格を欠くものではない。
(4)以上から、被告らが形式判決を求める根拠は、いずれも理由がない。
5、本件訴訟の争点と被告らの的外れの主張
(1)被告らは、答弁書第2の「2 本件訴訟の背景(患者の不利益を隠した病腎移植)」以下の記載において、これまでに行なわれてきた修復腎移植の重大な問題点として万波医師らの行なった修復腎移植(以下、「万波移植」という)の個別症例における手続的問題及び医学的問題をとりあげ、それらについての被告らの意見表明が、被告らの医師としての良心に従ったものであるかのような主張をして、被告らの違法行為を合理化しようとしている。
 そして、そのような主張内容をくり返して、万波移植を問題としている(被告ら準備書面(3)第3)。
(2)しかし、本件訴訟は、万波移植そのものの是非を問題とするものではなく、被告らが修復腎移植について表現した、一般的な修復腎移植の事実と評価に関する虚偽の内容を開陳したことの原告患者らに対する責任を問うものである。
 従って、被告らの主張する万波移植への個別的問題点に対する非難は本件争点には的外れのものであり、原告らとしては、原則的に争点としないことを明確にした(原告ら準備書面(2))。
6、違法行為に対する議論と到達点
原告らは、本件訴訟に揚げる被告らの違法行為を4つの類型とし、これらの類型ごとに詳細な主張・立証を行なってきた。
 以下、類型ごとにこれらをめぐる議論を振り返って、その到達段階を確認する。
(1)第1類型
  「移植に使えるほどの腎臓なら摘出する必要がないし、一旦摘出しても患者に戻すべきである」
   この発言が修復腎移植について、一般的に言うことが誤りであることは、小径腎癌では医学的に部分切除で本人に残しうる場合でも、現実には、ほとんどが全部摘出されていること、また、全部摘出が医学上も標準治療とされていることを明らかにした。そして、腎動脈瘤や尿管狭窄などの場合には、自家腎移植術によって、患者本人に戻しうるとの被告らの主張については、原告らにおいて、同手術は技術的に困難であって、現実にはほとんど行なわれていないことを立証の予定である。
(2)第2類型
 「移植に用いる腎臓に癌は禁忌である」
 被告らのこの発言に対しては、その当時の研究成果により、小径腎癌の場合における修復腎移植において、レシピエントへの癌の再発・転移のおそれがほとんどないことが、ニコル教授(豪)、ブエル教授(米)、タイオーリ教授(伊)らの発表によって明らかになってきていたことを示し、被告らの発言当時においても、小径腎癌の場合の修復腎移植が禁忌でなくなっていたことを明らかにした。
(3)第3類型
  「瀬戸内グループの修復腎移植の成績が悪い」   
 被告らのこの発言については、すでに修復腎移植を行なった3病院からカルテ等の記録が取寄せられ、さらに追跡調査がなされつつある。すでに独自の調査で、その成果が悪くないことを明らかにした難波名誉教授、堤教授の研究発表を原告らから書証として提出しているが、さらに原告らはカルテ等の詳細データに基づいて、修復腎移植の良好な成績を明らかにしていく予定である。
(4)第4類型
  ―被告田中の米国移植学会総会での万波医師らの修復腎移植の発表を妨害する書簡の送付―
  原告らは、学問・表現の自由にかかわる良好な成績の修復腎移植の研究発表を妨害する内容の書簡であることを、それが発せられた経緯や時期、臓器売買に関連があり、あるいは秘密裡に行なわれた医療と印象づける書簡の記載そのものから、十分な違法性が認められることを明らかにした。
7、医学的妥当性について
 被告らは、本件訴訟が医学的妥当性という抽象的で高度な医学的問題そのものを争点としており、裁判所の判断すべきことではない、とくり返し主張している。
 原告らは、本件訴訟の争点が、被告らの具体的表現行為そのものの違法性であることを明らかにしてきた。修復腎移植の医学的妥当性の問題については、被告らの違法行為の重要な間接事実であるので、医学的妥当性の問題についても主張、立証してきているところである。 その内容は、本件違法行為以外については、以下のとおりである。
(1)腎全摘の方法が、小径腎癌や尿管癌の修復腎移植の場合は血管を後から絞るのでドナーに癌転移の危険を増加させる、との被告の主張について
 これについては、通常の腎癌治療における腎全摘手術と小径腎癌の部分切除と同様の問題があるが、すでにどちらの場合でも、癌の再発・転移率に差異がないことが複数の一流論文で明らかにされている。
また、尿管癌の場合は、尿管自体が複数の血管系に支配されているため、腎臓の血管のみの結さつを問題にすることが不当であることをしめした。
 よって、血管を前に絞ろうが後に絞ろうが、ドナーの癌転移の危険は問題にならないことが示された。
(2)尿管癌の修復腎移植では、腎臓や尿管を全一体として切除しないと、切断した尿管などから癌細胞が漏れ出し危険である、との被告の主張について
 これについては、世界的な泌尿器科の教科書に明らかに癌の存在する部位を避けるなら尿管を切断してさしつかえない、とされているので、問題がないことを反論した。
(3)腎全摘をすれば、ドナーの生命予後が悪化するので、できるだけ腎癌の部分を切除すべきとの被告の主張について
 これについては、技術的に部位によっては、自家腎移植が必要になる場合があるが、同手術は難しいため、ほとんど行なわれないことや患者本人が全摘を希望する場合があることを指摘した。
 また、生命予後が悪いとする根拠のある論文はなく、むしろこれまでの生体腎移植ドナーの生命予後は悪くないとの経験則がある。
                    以上



準備書面(6)は下記のとおりです。

準備書面(6)

# by shufukujin-report | 2010-06-11 22:28 | 第5回口頭弁論詳細(1)

第4回口頭弁論・詳細(2)


修復腎移植訴訟 第4回口頭弁論・詳細(2)

2010.1.19(火)



平成20年(ワ)第979号損害賠償請求事件
原 告  野 村 正 良  外6名
被 告  大 島 伸 一  外4名

文書送付嘱託申立書

2010年1月12日
松山地方裁判所  御中

原告ら訴訟代理人
弁護士  林     秀  信

弁護士  岡  林  義  幸

弁護士  薦  田  伸  夫

弁護士  東     隆  司

弁護士  光  成  卓  明

弁護士  山  口  直  樹

 頭書事件につき,下記のとおり文書送付嘱託の申立てをする。



1 送付嘱託先
〒797-0015 愛媛県西予市宇和町卯之町1-246-1
西予市立宇和病院
〒791-8026 松山市山西町880-2
社会福祉法人恩賜財団済生会松山病院
〒790-0952 松山市朝生田町4-10-25
         佐藤循環器科内科         
〒797-0015 愛媛県西予市宇和町卯之町5-313-6
      おだクリニック      
〒798-0003 愛媛県宇和島市住吉町2-6-24
      医療法人沖縄徳州会宇和島徳州会病院      
〒798-0003 広島県竹原下野町3136
      医療法人社団仁慈会安田病院      

2 証すべき事実
  修復腎移植の生存率・生着率が高い事実

3 文書の表示
  別紙記載のとおり

4 送付嘱託の必要性
  被告高原は,「市立宇和島病院が集計したデータをカプラン・マイヤー法で統計処理した数値を,同様に解析した移植学会の生体腎・死体腎データと比較すると,生存率・生着率が低い」旨の発言を繰り返している。
修復腎移植の全例について生データをもとに解析すれば,修復腎移植の生存率・生着率が高く,上記高原発言が内容的に虚偽であることを立証できるが,そのためには,修復腎移植後においてレシピエントが同移植実施機関以外の医療機関に転院している場合,その予後が記載された転院先における診療録をも入手する必要がある。



(別紙)
送付を求める文書(西予市立宇和病院)

 市立宇和島病院において修復腎移植手術を受けた○○○○(住所,生年月日不明。平成○○年○月○○日以降に同病院から転医)の診療録(但し,看護記録を除く)。


(別紙)
送付を求める文書(済生会松山病院)

 市立宇和島病院において修復腎移植手術を受けた○○○○(住所,生年月日不明。平成○○年○月○○日以降に同病院から転医)の診療録(但し,看護記録を除く)。


(別紙)
送付を求める文書(佐藤循環器科内科)

 市立宇和島病院において修復腎移植手術を受けた○○○○(住所,生年月日不明。平成○○年○月○○日以降に同病院から転医)の診療録(但し,看護記録を除く)。


(別紙)
送付を求める文書(おだクリニック)

 市立宇和島病院において修復腎移植手術を受けた○○○○(住所:○○○○,生年月日:○○○○)の診療録(但し,看護記録を除く)。


(別紙)
送付を求める文書(宇和島徳州会病院)

 市立宇和島病院において修復腎移植手術を受けた下記患者らの診療録(但し,看護記録を除く)。



 1 ○○○○(住所,生年月日 平成○○年○月○○日に市立宇和島病院から転医)
 2 ○○○○(住所,生年月日)
 3 ○○○○(住所,生年月日)
 4 ○○○○(住所,生年月日)
 5 ○○○○(住所,生年月日)
 6 ○○○○(住所,生年月日)
 7 ○○○○(住所,生年月日不明。平成○○年○月○○日以降に市立宇和島病院から転医)



(別紙)
送付を求める文書(安田病院)

 呉共済病院において修復腎移植手術を受けた○○○○(住所:○○○○,生年月日:○○○○)の診療録(但し,看護記録を除く)。
# by shufukujin-report | 2010-01-31 17:32 | 第4回口頭弁論詳細(2)

修復腎移植訴訟 第4回口頭弁論

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修復腎移植訴訟 第4回口頭弁論

2010.1.19(火)

平成20年(ワ)第979号損害賠償請求事件
原 告  野 村 正 良  外6名
被 告  大 島 伸 一  外4名

調査嘱託申立書

2010年1月12日

松山地方裁判所 民事第2部 合二係  御中

原告ら訴訟代理人
弁護士  林     秀  信

弁護士  岡  林  義  幸

弁護士  薦  田  伸  夫

弁護士  東     隆  司

弁護士  光  成  卓  明

弁護士  山  口  直  樹

 
頭書事件につき、下記のとおり調査嘱託の申立てをする。

1、調査嘱託先
(1)〒466-8560 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65   
名古屋大学医学部附属病院
   (TEL 052-741-2111)
(2)〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-15
    大阪大学医学部附属病院
    (TEL 06-6879-5111)
(3)〒606-8507 京都府京都市左京区聖護院川原町54
   京都大学医学部附属病院   
   (TEL 075-751-3111)
(4)〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
    東京女子医科大学病院
    (TEL 03-3353-8111)
(5)〒143-8540 東京都大田区大森西5-21-16
    東邦大学医学部
    (TEL 03-3762-4151)

2、証すべき事実
   自家腎移植が、被告らの関係する病院でもほとんど行なわれていない事実

3、調査嘱託事項
   別紙記載のとおり。

4、調査嘱託の必要性
   被告らは、「移植できる腎臓なら、摘出後に修復して患者に戻す手術(自家腎移植)をすべきである」と発言していることに対し(訴状P23,第5の1(1)ア、訴状P27,第5の5(1)ア)、原告らは、自家腎移植はリスクが高く、患者の希望により自家腎移植しないで腎臓を摘出する場合があるので、虚偽の発言であり違法行為に該当すると主張している(訴状P39,第6の3(2))。
   そこで、原告らの主張を立証し、ほとんど自家腎移植が行なわれていないことを明らかにするため、先進的医療を行なっていると推察される被告らの所属し、あるいはかつて所属していた病院にその実施数を調査する必要がある。また、その実施割合を知るために、比較対象として、腎全摘術の原因疾患の大半を占め、かつ統計項目として一般的に用いられる腎細胞癌を原因とする腎摘出術症例数も調査する必要がある。
以上


(調査嘱託事項―調査嘱託先(1)~(4)について)
  調査嘱託を求める各病院に対し、つぎの事項について回答を求める。


 1、1999年度から2008年度までの間に実施した各年度別の、腎細胞癌を原因とする腎摘出手術症例数。

2、上記期間において実施した、各年度別の自家腎移植手術症例数。

3、上記2の自家腎移植手術の原因となったそれぞれの傷病名。


(調査嘱託事項―調査嘱託先(5)について)
  東邦大学医学部に対し、その附属する3つの医療センター(東邦大学医療センター大橋病院、東邦大学医療センター大森病院、東邦大学医療センター佐倉病院)ごとに、つぎの事項について回答を求める。


 1、1999年度から2008年度までの間に実施した各年度別の、腎細胞癌を原因とする腎摘出手術症例数。

2、上記期間において実施した、各年度別の自家腎移植手術症例数。

3、上記2の自家腎移植手術の原因となったそれぞれの傷病名。




平成20年(ワ)第979号損害賠償請求事件
原 告  野 村 正 良  外6名
被 告  大 島 伸 一  外4名

調査嘱託申立書

2010年1月18日
松山地方裁判所民事第2部  御中

原告ら訴訟代理人
弁護士  林     秀  信

弁護士  岡  林  義  幸

弁護士  薦  田  伸  夫

弁護士  東     隆  司

弁護士  光  成  卓  明

弁護士  山  口  直  樹


頭書事件につき,下記のとおり調査嘱託の申立てをする。

第1 調査嘱託先
〒113-0034 東京都文京区湯島2-17-15 斉藤ビル5階
                日本泌尿器科学会
                 電話 03-3814-7921
              ファックス 03-3814-4117

第2 調査事項
別紙のとおり

第3 立証趣旨
1被告相川は,平成20年3月19日,国会議員で作る「修復腎移植を考える超党派の会」において, 「皆さん,これが問題だと思います。腎臓の癌です,腎臓の癌で大きさが4cm以下で被膜という浸潤のないところの癌はやってもいいのではと議論が出ています。この様な癌は部分切除すればいいんですよ。その患者さんの。それ全部切除するのが当たり前と言っていますが,そんな事はありません。腎機能を温存するという事は第一の問題です。その患者さんの腎機能を守る事が第一の問題です。慢性腎臓病対策で厚生労働省で3年前から行われますけど,これも一環としてどうしても必要。最近の大学では内視鏡でこれやっているんですよ。部分切除。内視鏡の手術でもこの手術行われているんですよ。大学で。だから50歳代以上のロートルの泌尿器科医は知りませんけど40歳代から50歳代の泌尿器科の専門医であれば先ほど高原先生が言った様に部分切除です。全て取るなんて今の普通の泌尿器科の経験のある先生であればやりません。」と発言し,これが違法行為として本件の争点となっている。

2そして,この点について,被告らは,「4cm以下の小径腎癌も…部分切除にとどめ,患者の予後の為に腎機能を残すべき」(答弁書5頁),「今回の病腎移植の提供者となった腎癌患者は全て部分切除で対応可能な患者であり,敢えて腎全摘術を行なうことは患者自身の腎機能を将来的に悪化させ,生命予後も悪化させる不利益がある」(同7頁),「予後に関しては部分切除の方が優位に結果が良いのであり,そのため腎部分切除が標準的治療法となってきているのである」(同16頁)と主張している。

3ところで,甲B29号証は,2008年3月頃,厚生労働省が,国会議員で作る「修復腎移植を考える超党派の会」に提出したものである。

4甲B29号証2項では,日本泌尿器科学会が,2007年の手術について,2008年に行った調査によると,悪性腫瘍手術合計5880件の内,全摘が4848件(82・4%)で,部分切除は1032件(17・6%)に過ぎなかったとされている。

5この調査結果によれば,被告相川の上記「全て取るなんて今の普通の泌尿器科の経験のある先生であればやりません」といった発言,ならびに被告らの「腎部分切除が標準的治療法となってきている」といった主張が完全に事実に反することが明白である。

6そこで,上記調査ならびに調査結果の詳細について日本泌尿器科学会に調査嘱託を行ってこの点をさらに明らかにするとともに,それ以前の全摘割合は過去に遡るほど高くなると見込まれるので,同調査以前の10年間について,同様の調査嘱託を求めるものである。

調査事項


1.厚生労働省作成の別紙「腎摘出術の現状」2記載の貴学会の調査について,いつ,どのような内容について,どのような対象に対して,どのような調査を行い,その結果はどのようなものであったか,関係資料を添付して回答願います

2.上記1の調査は,2007年の手術について,2008年に行った調査のようですが,それ以前の10年間に同様の調査を行っていますか。

3.上記2で行っている場合には,その各調査について,いつ,どのような内容について,どのような対象に対して,どのような調査を行い,その結果はどのようなものであったか,関係資料を添付して回答願います。



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# by shufukujin-report | 2010-01-23 18:56 | 第4回口頭弁論詳細(1)

第3回口頭弁論<準備書面(4)>

第3回口頭弁論<準備書面(4)>_e0163728_1225724.jpg


修復腎移植訴訟 第3回口頭弁論

2009.10.20(火)


第3回 修復腎移植患者訴訟



平成20年(ワ)第979号損害賠償請求事件
原 告  野 村 正 良  外6名
被 告  大 島 伸 一  外4名


準備書面(4)

2009年10月13日

松山地方裁判所民事第2部  御中


原告ら訴訟代理人
弁護士  林     秀  信

弁護士  岡  林  義  幸

弁護士  薦  田  伸  夫

弁護士  東     隆  司

弁護士  光  成  卓  明

弁護士  山  口  直  樹



第1 本件は修復腎移植の医療の適否を争う目的で争訟性を欠く、との被告らの主張について。

1、被告らは、原告らが本件において高度に専門的な医療の内容の適否を抽象的に争う目的であるから、司法の任務を逸脱し、法律上の争訟性を欠くと主張する。
 しかし、本件では以下に述べるように、原告らは、事実を偽って修復腎移植を批判し、患者や社会に対し否定的事実や判断を与えた被告らの表現行為の違法性を問題としているのであって、修復腎移植そのものの妥当性を直接の目的とするものではない。

2、原告らは、本件訴訟において、被告らが修復腎移植の事実と評価を偽った点として、つぎの3つの違法行為該当事実の類型をあげている。
①移植できる腎臓なら本人に戻すべきである。
②癌の腎臓の移植は禁忌である。
③修復腎移植の成績が悪い。

  ところで、これらの発言、発表は修復腎移植の必要性、有効性に否定的評価を与えるのみならず、これらの虚偽の事実がそのまま被告らが幹部である日本移植学会を中心とする4学会共同声明に引き継がれ、上記②③の類型は、修復腎移植の医学的妥当性がない、とする重大な根拠とされている(甲B21号証)。
4学会声明は「病腎移植が医学的に妥当か?」として、これを否定する一般的理由として、次の点をあげる。
(1)感染腎や腎動脈瘤では、感染症や破裂の持込のリスクがある。
(2)癌患者からの腎臓を移植腎として用いることは、癌細胞の持ち込みの可能性が否定できない。
(3)生存率・生着率が劣るとのデータもある。

 これを見ると(1)については、感染以外のドナーの疾病の場合には一般的に修復腎移植を否定する理由とはならず、また腎動脈瘤が、移植による破裂のリスクの持ち込みがあるとすることは、患者本人の腎動脈瘤の治療においても同じリスクが残るのだから、修復腎移植を否定する理由にはならない。(2)については、癌の臓器の移植は禁止とする、前記違法行為該当事実②の理由であり、(3)については、修復腎移植の成績が悪いとする同③と同じである。

 つまり、修復腎移植の医学的妥当性を否定した4学会共同声明は、前記違法行為該当事実のうえに成り立っているものであり、違法行為該当事実が虚偽であることが明らかになれば、たちまち“砂上の楼閣”として崩壊するものである。

 原告らが、本件訴訟で明らかにしようとしている被告らの行為の違法性と本件訴訟の意義としての修復腎移植の妥当性とは、表裏の関係にあるにすぎない。

 よって、原告らの主張立証目標は、直接には前記違法行為該当事実が虚偽であるという事実問題であるから、何ら修復腎移植の高度の専門的医学的内容の適否などの判断を求めることを目的とするものではなく、被告らの主張は失当である。


第2 修復腎移植問題をめぐる被告らの態度

1、被告らは、本件における争点が高度な医学的内容を問題とするものであると主張するが、事実経過における被告らの対応、態度の変遷をみれば、本件問題は、そもそも“高度な医学的問題”ではないことが明らかになる。
以下、その経過をみていく。

2、まず、修復腎移植発覚直後に被告大島(当時、日本移植学会副理事長)と当時の厚生労働省健康局長外口崇との間で、修復腎移植を禁止するため、学会で調査を行い、行政もこれを支援するという合意がなされている(甲B第22号証)。この時点ですでに、全く医学的論争や検討なくして、修復腎移植を否定する方針が打ち出され、これ以後“まず結論ありき”の方向で、事態が進行していく。

3、それを示す一つの象徴的事実が、宇和島徳洲会病院専門委員会で行なわれた藤田保健衛生大学の堤教授の意見を排除した関係5学会「原則禁止」方針の発表である(甲B第23号証)。

 堤教授は、万波誠医師が患者との深い信頼関係に基づいて、患者に寄り添った医療をしていること、小径腎癌は部分切除すべきであるという主張は腎全摘術が主流の現実と違っていること、全摘よりも腎臓を残す術式をまず検討すべきであるという主張もリスクが高くなり、現実的でないこと、ドナーの人権を守りつつ修復腎移植の道を探ることが患者のためになることなどを同専門委員会で力説した。しかし、同教授の主張は、他の関係学会派遣委員らに無視され、5学会の統一方針として修復腎移植を原則禁止とするとの決定がなされた(甲B24,25号証)。

4、また、修復腎移植について、当初「移植に使えるようないい腎臓を、本人に戻さないことがおかしい」といっていた被告大島が、その数日後の06年11月9日には、以前のケースにおいて自ら修復腎移植にゴーサインを出していたことが明らかになった(甲B第26号証)。

 そのケースは1991年、藤田保健衛生大学の星長教授が行なった腎動脈瘤患者をドナーとする非親族間腎移植であり、レシピエントは愛知県腎臓バンクを通じて選定されるなど手続的には十分な配慮がされていた。

 当時、被告大島は愛知県腎臓バンクセンター長の地位にあり、公的立場で病気の腎臓を移植に使うことを承諾していたのである。

 このことが新聞で報じられると、被告大島の従来の態度は一変し、「病気の腎臓を移植に使うことが一律に悪いわけではない」と修復腎移植容認とも窺える態度となった(甲B第27号証)。

 被告大島が、彼にとってはこのような希有のケースを忘れるはずはないから、修復腎移植を行なう余地はあることを知りながら、これを秘匿して「移植できるようないい腎臓は戻すべきだ」と主張していたことになる。被告大島のこのような態度は修復腎移植を否定する“まず、結論ありき”の現れであり、医学的問題や医学的見解に基づくものではない。

5、修復腎移植が発覚する1ヵ月位前の06年9月26日に癌の疑いのある腎臓を親族間で移植したケースが、07年5月27日付各紙で報道された。

 秋田大学医学部附属病院で行なわれた母の腎臓を子に移植する生体腎移植では、術前の検査でドナーの腎臓に癌のある疑いがあることがわかったが、その危険性を母子に説明して同意を得たうえで移植に踏み切っている。院内の倫理委員会も通していない。腫瘍が良性であると確定されたのは手術後であった。

 倫理とは、行為者本人の内心に対する規範であるから、結果的に癌でなかったことは倫理上、合理化できない。

 そして、ここでの問題は、生体、死体を問わず、癌の臓器の移植は禁忌であると主張する被告らの移植医療の倫理を逸脱した点にある。これについて被告大島のコメントは、本ケースは万波医師の移植とは異なり、母親が明確に提供する意思を持っていたものだから問題はない、という的外れのものであった。

 また、被告高原も、最初から移植目的であり、術前、術中の検査による慎重な検討を加えており、危険はほとんどなかった。通常の治療内容といえる、とコメントしている(甲B第28号証)。

 癌の臓器の移植は禁忌である、と万波医師らの修復腎移植を非難しておきながら、大学附属病院で行なわれた癌の疑いのある腎臓の移植については、ドナーが予め提供意思をもっていたとか、危険性が少なかったなどというコメントは、全く理由になっていないし、明らかに矛盾している。

 ここでも、万波医師らの修復腎移植に対して、“まず、結論ありき”が明らかである。

6、つぎに、本件修復腎移植問題を被告らは「高度に専門性が高い医学的問題」であると主張し続けるが、そのような専門性の高い問題が、どのように被告らにおいて検討されてきたかをみる。

(1)違法行為該当事実1「移植できる腎臓は本人に残すべきだ」という主張事実は、被告らの独自の仮説にすぎず、その仮説が正しいか否かの実証、検証は全くなされていない。

 日本や世界で、これまで病気の腎臓を修復し移植した例がどの位あったか、それはどのような事情でなされたか、また、小径腎癌を部分切除して本人に残すことは、現実に行なわれていることなのか、その数や割合はどうか。全摘が多いとしたら、その理由は何か。これらの現実の医療に対する考察なしには、被告らの仮説は単なる一方的主張にすぎない。

 被告らは、前記の現実的問題点の考察を一切せずしてドグマを主張しただけである。これが、「高度な専門的な問題」でも「医学的問題」でもないことは明白である。

(2)違法行為該当事実2「癌の腎臓の移植は絶対禁忌」との主張は、癌の腎臓の修復腎移植はレシピエントに癌の再発・移転のおそれがあるという理由に求められている。

 医学の進歩は日進月歩であり、医学研究や医学知識はたえず新しい情報をもとに更新していかなければ医学の進歩はおぼつかない。本件事件が発生した2006年11月当時、少なくとも2004年5月に発表されたニコル教授の小径腎癌移植18例(07年7月には43例)及び2005年2月に発表されたブエル教授の同14例の好成績は明らかになっていた。

 被告らは、これらの小径腎癌の修復腎移植の好成績を知りながら、これらを調査、研究しようともせず、今日まで無視し、無関心を装っている。

 例えば、被告高原は08年3月19日超党派の会において、「ニコルさんの発表は恐ろしく良い結果ですが、問題はインフォームドコンセントです」(甲B10 P5中段)として、小径腎癌の修復腎移植に癌の再発・転移がないことを等閑視して、手続きの問題でケチをつけている。

 さらに、被告高原は、タイオーリらの論文の結論が、臓器移植においてドナーからレシピエントに癌が伝播するリスクは低いとされている(甲C4(訳)3枚目左下)ことを隠し、2例の非黒色腫性皮膚癌が発症したことのみを厚生労働省に研究報告している(乙2 P2右10行目)。

 不都合なことを隠してなされた研究発表は、「高度な専門性」を備えていると言うことができるのだろうか。

 被告寺岡は、2008年5月19日に行なわれた日本移植学会の記者会見でペン論文やアメリカの統計を紹介し、癌の臓器移植における伝播率を示した後、ニコル博士やイタリアの例は極めて特殊な例と考えている、と述べるだけで、どこが特殊なのかについては触れていない(甲B16 P4下から15行目)。

(3)以上述べたように、被告らは、本件事件は「高度に専門性が高い医学的問題」と主張するが、その実態は、一昔前の古い研究成果や自分たちの仮説にすぎない主張にしがみつき、それと矛盾する現実的主張や相反する研究成果は調査、研究をするどころか隠蔽、無視をするという態度で一貫している。このような態度をとる被告らの医学者としての見識を疑うが、これらからも本件修復腎移植問題が高度な医学的問題でないことは明らかである。

7、以上、事件の経過に沿って、明らかになってきた事実を示して、本件事件が決して高度な医学的問題や論争に関わるものでないことを解明した。

 本件の争点は、直接には被告らの不法行為に該当する要件事実の存否そのものにあり、事実関係の争いである。

 被告らは、これ以上、自分たちの“権威”をかさにきた「高度な医学的問題」を理由とする事実のごまかしや争点逃れを続けるべきではない。 


第3 修復腎移植のドナーへの影響 

1、原告らは、訴状、準備書面並びに書証によって修復腎移植がレシピエントに対して必要、有効なことを主張し、これまでかなりの程度明らかにしえたものと考えている。 

 そこで、ここでは修復腎移植のドナー(修復腎移植では、本来自ら治療を受ける患者であり、本来的なドナーとは異なるが、便宜上このように称する)に対する影響を検討する。

2、被告らは修復腎移植を否定するに至った理由として、万波医師らの修復腎移植がインフォームドコンセントや同意書面、院内手続きなどで不備があり、ドナーの権利が侵害されたことを繰り返し主張している。

 過去の手続き的不備は将来への手続き体制の構築や手続き順守により瑕疵なき手続きとなしうるのであるから、過去が誤ったから将来も許されないとすることは論理的でないし、何よりも医学の発展、患者の救済に背を向けることになる。

 医師として、患者を救済することが第一の本分であり、被告らがなすべきことは、ドナーの人権侵害が起きないように、手続きの構築に努めることである。このような医師の本分を放棄し、手続き違反をあげつらうことは、論理を欠いた態度といわざるを得ない。

3、被告らは、小径腎癌のケースにおいて腎臓への血管を縛る順序が単に腎臓の全摘治療をする場合と修復腎移植を行なう場合とで違っており、単に全摘治療をする場合は最初に腎臓の血管を縛るのに対し、修復腎移植の場合は腎臓を周囲の組織から剥離した後、摘出直前になって初めて血管を縛るのであるから、剥離操作の時に癌細胞を血流によって移動させるおそれがあるので、血管を後で縛る方法はドナーに不利益であり、許されないものと主張する。

 しかし、この被告らの主張は単なる仮説の域を出るものではなく、何ら実証性がない。
 現代医療において、いかにもっともらしい仮説を立てようと、証拠に基づかない医学的主張はEBM(Evidence-Based Medicine)の理念に反するものとして、その根拠は乏しいものとされる。   

 一方、被告らの主張に反し、血管を先に縛ろうが後に縛ろうが、それによる癌の再発・転移率に差はないことを示唆する研究報告がある。

 患者に小径腎癌がある場合に、その治療として部分切除手術を行う場合には、腎機能を温存するために修復腎移植のための摘出と同様、腎臓を周りの組織から剥離した後に血管を縛る。従って、部分切除手術の癌の再発・転移率は修復腎移植のドナーにおける癌の再発・転移率を示唆するものになる。
これについて、世界的に有名な病院であるメイヨークリニックとクリーブランドクリニックの二つの報告(甲C第14,15号証)では、小径腎癌に対する全摘手術と部分切除手術とで、癌の再発・転移率に差異はない、と結論されている。

 こちらはEBMに基づく結論であり、被告らの仮説を否定するのに十分な根拠である。

 よって、被告らの修復腎移植におけるドナーの血管を後から縛る手術方法が癌の再発・転移率を高めるとする主張には根拠がない。

4、被告らは尿管癌の修復腎移植についても腎臓の血管を後から縛った場合や尿管を途中で切断した場合の癌細胞の転移の危険性を主張している。

 しかし、被告らの主張する尿管癌の修復腎移植における腎臓の血管を縛る順序は問題とはならない、と考える。

 なぜなら、尿管への血流を支配している血管は腎動脈のみではなく、特に中部から下部の尿管は主に腹部大動脈や腸骨動脈など、腎臓以外の血管から血液供給を受けているため、腎臓への血流のみを止めることは重要な意味をもたないからである(甲C第16号証)。

 また、癌の存在する尿管をその全長にわたり、腎臓とつながったまま一塊として切除することは必要ではなく、明らかに癌の存在する部位を避ければ尿管を途中で切断し分けて切除することも術式として認められている(甲C第17号証)。甲C第16、17号証は、泌尿器科の世界的教科書とされているキャンベルーウオルシュ ウロロジー(第9版)である。

 以上から、尿管癌の場合の修復腎移植においては、腎臓の血管を縛る順序や尿管を切断して切除することを問題とすべきではない。

被告らの主張はいずれも理由がない。


第4 腎全摘術の患者の生命予後に及ぼす影響

 被告らは答弁書16ページ6(5)②において「全摘を行うことにより生命予後が悪化することが統計上明らかになっている」と主張している。

 ここで、「統計上」とは、何を示しているのか明確でないが、被告ら提出の書証乙第29号証(ヒューストン・トンプソンらの論文)の内容を意味するものと思われる。

 この論文の要点は、小径腎癌の治療法において、全体として腎全摘手術を受けた患者と部分切除手術を受けた患者の生命予後の比較では違いが認められないが、65歳未満の患者についてみれば、全摘手術の患者の方が部分切除の患者よりも有意に生命予後が悪いとするものである。

 ところで、乙第29号証の1(英原文)はThe Journal of Urologyから全文を引用、提出しているにもかかわらず、同号証の2(訳文)では、同号証の1(原文)P472以下のEDITORIAL COMMENTSを意識的に訳から外し、ここでも自らに不利益な情報を隠している(甲C第18号証)。

 上記EDITORIAL COMMENTSでは同誌の編集者らが、この論文の手法及び結論に重大な疑念を提出している。

 それを要約すると、
①論文では、患者の死亡原因が考慮されておらず、生命予後の違いが腎臓の手術方法によるか否かは明らかでない。

②患者を65歳未満で区別して観察しているが、その区別の意味が不明であり、著者らの意図する結果を恣意的に導くおそれがある。

③全身状態の悪い患者は、術式の選択にかかわらず、生命予後は悪い。そして、全身状態の悪い患者は、一般的に腎全摘手術を受ける。
論文中の患者におけるECOGパフォーマンス・ステータス(日常生活動作による健康状態評価指標)(甲C第19号証)に着目すると、腎全摘を受けた患者においてかなり悪く、それを補正したところ、術式の違いによる統計学的な生存率の差は消失した。

④結論として、著者らの腎全摘手術により患者の生存率が低下するとの結果は、決定的なものではなく、一つの仮説にすぎない。

というものである。

 医学者どうしの議論であり、その表現は穏かさを保っているが、一言でいえば、証明力のないインチキくさい論文ということである。

 そのようなものを裁判で不利な部分を隠してまで証拠として提出する態度は、被告らの学者としての資質さえ疑わせるものである。

 以上のとおり、腎全摘術が患者の生命予後を悪化させるとの主張は、根拠がない。
                            
 以 上





平成20年(ワ)第979号損害賠償請求事件
原 告  野 村 正 良  外6名
被 告  大 島 伸 一  外4名

証拠説明書(4)

2009年10月13日

松山地方裁判所民事第2部  御中


原告ら訴訟代理人
弁護士  林     秀  信

弁護士  岡  林  義  幸

弁護士  薦  田  伸  夫

弁護士  東     隆  司

弁護士  光  成  卓  明

弁護士  山  口  直  樹


頭書事件につき、下記のとおり甲号証の説明をする。
なお、原告ら提出の平成21年9月11日付証拠説明書(B2)を証拠説明書(3)とし、本書面を同(4)とする。


甲B号証


甲C号証
# by shufukujin-report | 2009-10-17 23:44 | 第3回口頭弁論詳細(1)