人気ブログランキング | 話題のタグを見る

修復腎移植訴訟 訴状・要約(2) 




訴状・要約(2)(学会幹部損害賠償)



第6 本件各違法行為該当事実が違法であることの理由:(修復腎移植が治療行為として妥当であること)
1 修復腎移植の治療行為としての妥当性を検討するに当っての出発点(基本的考え方)
(1)修復腎移植の検討で、最も重要なことは「修復腎移植という行為が、ドナーおよびレシピエントにとって、治療行為として妥当なものといえるか」ということである。
従って、手続的問題である①インォームドコンセント(IC)がなされ、文書化されているか、②レシピエントの選定に公平性があるか、などは修復腎移植の治療の妥当性と無関係である。
もし、手続面が問題であるというなら、次の手続きをとれば足りる。
(ア) ①ドナーの治療およびその選択結果としての腎臓摘出決定の手続と、その後の②移植に利用するための手続とを分離する。
(イ) 上記(ア)の①と②の過程において、患者に関わる医師を別の医師とし、かつ、それぞれの過程で別個のICを取る。
(ウ) 手術方法として腎臓摘出を選択する場合の適応性については、倫理委員会などの監視機関を設ける。
また、レシピエント選定の公平性については、臓器配分機関が存在せず、また、公平性を強調し、修復腎移植を否定することは、治療を受ける権利を奪うことになり、不当である。
(2)治療の妥当性を考える場合には、100%安全確実な医療は存在せず、移植医療にも、拒絶反応や免疫抑制剤の合併症も起こりうる。
しかし、修復腎移植を希望する患者は、透析医療の予後が悪く、死体腎移植待機期間も長期に及ぶというリスクを前提に、修復腎移植を受けるリスクとベネフットとを考慮して、修復腎移植を選択するものであって、修復腎移植の治療成績からすると、極めて妥当な医療である。

2 レシピエントの立場からの修復腎移植の治療行為としての妥当性
腎臓摘出の病因が腎癌以外の場合には、疾患部分を切除、修復すればよいので、移植に利用することは問題がない。
腎癌の場合も、癌がレシピエントに再発、転移を生じる可能性は少ないので、透析患者が、これを選択することに特段の問題はない。

以下、国内外の修復腎移植の実績について検討する。
(1)国内における修復腎移植の実績
非腫瘍性疾患腎の修復は、1956年から2006年まで合計95例(瀬戸内グループのものを含む)が公表されている。
また、良性腫瘍に患った腎臓の移植は3例である。
悪性腫瘍については、1993年下部尿路癌の腎臓を1996年腎細胞癌の腎臓をそれぞれ初めて移植に利用した。
瀬戸内グループは腎細胞癌および下部尿路癌の腎臓それぞれ8個計16個の癌罹患腎を移植しているが、ドナーの癌がレシピエントに転移した例はなく、再発した例が1例ある(但し、死因ではない)。
ネフローゼ腎の治療としての腎摘出例もある。瀬戸内グループによるネフローゼ患者からの摘出腎の移植が4例ある。移植を受けた8人のうち6人は成功した。
瀬戸内グループの修復腎(レストア腎)移植の成績をまとめると、別紙5の「グラフ」のとおりである。レシピエントの平均年齢が50代と高いことを考えると、悪い成績ではない。また、42症例のドナーは67%が70歳以上の高齢であり、これと生体・死体腎移植の70歳以上のドナー腎の移植成績と比較すると、瀬戸内グループの場合は死体腎と生体腎の間に位置する成績である。
(2)海外の状況
豪クィーズランド洲のプリンス・アレクサンドラ病院ではデビット・ニコル教授を中心に1996年から小径腎癌の修復腎移植が行なわれ2007年7月現在で43例となっている。癌の転移は全くなく、死体腎移植を上回る成績であり、他洲の病院へも広がっている。
(3)移植により、癌が再発、転移するか。
ア 修復腎移植の場合は、予めドナー腎に詳細な検索を行ない、癌組織の完全な切除を尽くせば、癌の再発、転移の危険性を著しく低下させることができる。
イ 最近の医学論文や報告で癌の再発、転移は認められない。
   ・米国シンシナティ大学の疫学的研究では14例のケースで腎臓移植による癌の再発、転移は全くなかった。
   ・米ピッツバーグ大学と伊・国立移植センターの共同疫学研究によると、癌のリスクを有するドナー59例から、さまざまな臓器の移植108例が行なわれたが、いずれも再発、転移を認めないと報告された。
   ・豪プリンセス・アレクサンドラ病院で小径腎癌のケース43例について、全く癌の再発、転移がない。
   ・瀬戸内グループの行なった小径腎癌及び下部尿管癌のケース16例につき、レシピエントに癌の再発、転移はない。

以上のとおり、修復腎移植の成績は、癌のケースも含めて、良好な成績である。

3 ドナーの立場からの修復腎移植の治療行為としての妥当性
(1)医学的に本人の治療で、腎臓を本人に残す(戻す)ことが可能であっても、摘出してしまう治療が妥当な場合がある。
なぜなら、一般的・標準的治療とは異なり、現場の医療は、限られた条件の下で、患者の意思を尊重して行なわれるからである。
具体的状況下で患者自らそれぞれの治療法の利害得失を考えて選択した結果、最善の治療と異なった治療法を選択したとしても、医療としての適応はある。
(2)全部摘出の必要のない小径腎癌(径が4㎝以下の腎癌)であっても、癌の再発を恐れて全部摘出を希望する患者もいる。また自家腎移植が可能でも、手術に長時間(7、8時間)を要するため、リスクが高くなり、実施されることはほとんどない。
(3)現実に小径腎癌は部分切除も可能であるが、多くの場合、全部摘出が選択されている。
厚労省の調査報告では2006年8月の1ヵ月間において腎臓癌の治療として約82%が全摘されている。
堤寛教授(藤田保健衛生大学)の調査では、14の公立病院での最近3年間における腎細胞癌治療として、全867例中全摘は85%、小径腎癌でみると、全摘は平均値70%、中央値83%と圧倒的に全摘が多かった。

以上のとおり、本人に残すことのできる腎臓を治療として全部摘出することが、妥当または容認される場合は多い。


第8 結論
被告らの各違法行為は、故意又は過失により、最初から修復腎移植を認めないとの結論ありきからなされ、いずれも全く的外れか、または事実と異なる虚偽の内容のものであって、その結果、原告らの修復腎移植治療を受ける権利が侵害された。さらに、またガイドライン改正がなされ原告らが修復腎移植を受けることを禁止されたため、原告らの治療を受ける権利が侵害された。


第9 原告らの損害
原告らは、いずれも現在又は将来、修復腎移植を受ける必要性があるにもかかわらず、被告らの違法行為によって、受けることを不可能とされている。そのため、原告らは、つぎの損害を生じている。
1、透析を受けている原告らの損害
移植を受ける必要があるにもかかわらず、修復腎移植を受けることができないため、透析医療による多大の苦痛と死の恐怖に直面している。また、将来にわたり腎移植を受けることができない恐れを抱いている。
その損害は、少なくとも金1千万円に相当する。

2、移植腎が機能している原告らの損害
移植を受け、腎機能を有している原告は、将来腎移植を受ける必要のあるものであって、修復腎移植を受けることができないため、将来、必要な腎移植が受けられない恐れ及び死の恐怖に直面する恐れを有している。
その損害は、少なくとも金500万円に相当する。

3、弁護士費用
訴訟のための弁護士費用として、透析患者の原告らは各100万円、移植した原告は各50万円を下らない出費を要する。


第10 結語
よって、原告らは被告らに対し、民法709条(不法行為)及び同719条1項前段(共同不法行為)に基づき、損害賠償を請求する。


以上



別紙3 寺岡発言
記者会見発言抜粋一覧表


1 病気を持った患者さんが、その病気に対する治療を受け、治療に関する手術を受けないで、そして移植を優先した。つまり、むしろ移植のドナーとしてだけ腎臓を摘出すると。これが一番大きな問題です。…癌の患者さんに移植をする腎臓を摘出手術を行いますと、その患者さん自身の癌細胞をまき散らして癌が再発するリスクを非常に高めるわけであります。事実、尿管癌で手術をされた患者さんは、非常に生存率が悪い。多くの方が死亡されています。ですから、私としてはまず一番大事なことは、腎臓あるいは尿路系に疾患を持たれた患者さんが、その治療のために受診されたにも関わらず、その治療のための手術ではなくて、移植のための摘出術を受けざるを得なかった。受けざるを得なかったというのか、その手術をされている。したがって、私たちはこれはこの疾患に対する適切な治療法とは、どうしても見なせません。そこに一番の問題があります(違法行為2に該当)。

2 それから、これはタカハラ先生が先ほどお話になりました、近い将来皆さんにお渡しできると思います厚生労働省への研究報告書になりますが、それには世界各国の現時点における悪性腫瘍が現存する場合、あるいは過去に悪性腫瘍があった場合、そういう既往がある場合にどういう取り扱いをするかということが、詳しく引用されております。ぜひお読みいただきたいと思いますが、現在のもっとも標準的、一般的な考え方は、皮膚癌、脳腫瘍以外の場合の癌がある場合は、完治をして5年以上経過した段階で問題ないと思われる段階に、はじめてドナーとしてなりえる。それから、脳腫瘍も何度も手術をしたような場合は別なのですが、それからメラノーマ(悪性黒色腫)を除く低悪性度の皮膚癌、こういったものはまたそれとは別の扱いになります。もう一つだけ申し上げますと、これはそういうふうに-これはアメリカの腎移植の統計ですが-そのように5年以上完治したものをドナーとして提供した場合、それでも残念ながら4.3%の方にドナー由来の悪性腫瘍が発生するという報告がございます。これは新しい最近の報告です。これはちょっと古い報告になりますが、癌が現存する場合、今ある場合、その方から移植した場合にはドナー以外の悪性腫瘍、癌の発症率は43%と言われています。これが一般的な考え方です。ですから、先ほどのニコル博士、それからイタリアの例、これは極めて特殊な例と考えております(違法行為2に該当)。

3 腎癌で摘出した腎臓は、捨てるわけではありません。これは連続切片を作って、それを病理学的に検討するわけです。そして腎癌というのは単発であっても、そのまわりにいくつかの小さな癌がある場合が、かなり多いわけです。そういったものを病理学的に検査をした上で、そのあとにその方が化学療法が必要であるとか、例えばインターフェロンを打つ必要があるとか、そういったことを総合的に。癌の治療というのは集合的治療と言いまして、手術だけではありません。そのあとの治療も必要なわけです。ですから、腎臓で小さな癌、例えば4センチ以下の癌が問題となってきますが、それを本当に摘出、切除するか、あるいは全摘するかというのは大きな議論になりますでしょうが、将来的には部分切除になる、これは文句が無い。しかし、現在では全摘が多いということも事実であります。しかし、それはそこで全摘して腎臓を摘出したからといって、それは捨てる腎臓ではありません。これは、それを十分に病理学的に検索して、それをその患者さんの治療に反映させることが一番のねらいです。ところが、今回の事例では非常に残念ながら、そういった病気の治療を目的に来た患者さんでの、その後の治療、経過観察が全然なされていないものもありまして、私はもともとその病気の治療に関わった方に対して、手術でも適切ではないし、その術後の経過観察、術後のケアに関しましても適切ではないと言わざるを得ないと考えております(違法行為1に該当)。




被 告 目 録

〒474-8511 愛知県大府市森岡町源吾36-3 国立長寿医療センター内
           被 告  大  島  伸  一

〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2 大阪大学大学院内
           被 告  高  原  史  郎

〒650-0047 神戸市中央区港島南町2丁目2番 先端医療センター内
被 告  田  中  紘  一

〒162-0054 東京都新宿区河田町8-1 東京女子医科大学内
           被 告  寺  岡     慧

〒143-0015 東京都大田区大森西6-11-1 東邦大学医療センター
大森病院腎センター内
           被 告  相  川     厚





原告ら訴訟代理人目録

弁 護 士  林    秀 信     岡山弁護士会所属
住 所 〒700-0816
       岡山市富田町2丁目3番14号 清和ビル3階
        林秀信法律事務所
   電 話 086-227-0321/FAX 086-227-0390

弁 護 士  岡 林  義 幸     愛媛弁護士会所属
住 所 〒790-0001
       松山市一番町1丁目14番地10 井出ビル2階
        瀬戸内法律事務所
   電 話 089-932-1666/FAX 089-932-1748

弁 護 士  薦 田  伸 夫     愛媛弁護士会所属
住 所 〒790-0001
       松山市一番町1丁目14番地10 井出ビル2階
        瀬戸内法律事務所(送達場所) 
   電 話 089-932-1666/FAX 089-932-1748

弁 護 士  東   隆 司     岡山弁護士会所属
   住 所 〒700-0817
       岡山市弓之町17番13号リヴラン弓之町1階
   電 話 086-222-4113/FAX 086-222-4116

弁 護 士  光 成  卓 明     岡山弁護士会所属
住 所 〒700-0816
       岡山市富田町1丁目3番15号 グランデール2階
        光成法律事務所
   電 話 086-224-2809/FAX 086-224-2819

弁 護 士  山 口  直 樹     愛媛弁護士会所属
住 所 〒790-0001
       松山市一番町1丁目15番地2
松山一番町ビル5階 山口直樹法律事務所
   電 話 089-933-2757/FAX 089-933-5616





緊急報告
修復腎移植訴訟について


 現在、修復腎移植は日本移植学会など関係学会による不誠実かつ誤った医学的見解に誘導された形で厚生労働省により原則禁止とされています。これまで移植への理解を求める会などを中心に、厚生労働省、関係学会、マスコミなどに対し修復腎移植の再開を強く求めてきました。然るに、医学的な可能性を追求する姿勢、患者救済の動きはまったくなく、これまでの回答に終始しています。

 その中で「修復腎移植を考える超党派の会」(会長:杉浦正健・元法相)が私たち患者の声に耳を傾けていただき、独自の調査により、5月13日、修復腎移植を容認する見解をまとめられました。さらに長崎医療センターにおける患者アンケートでも修復腎移植を受けたいと希望する患者が、透析患者の半数になるという調査報告もあり、全国で大変多くの患者がこの修復腎移植を切実に求めています。厚生労働省と日本移植学会は、こうした見解に対しても冷淡な態度を取り続けているため、私たちは自ら戦うことを選択し、厚生労働省と日本移植学会の幹部などを相手に訴訟を起こすこととしました。この間、原告団となる患者二名の命が失われ、私たちにはもう待てる時間がまったく無いとの認識から、12月10日に、日本移植学会幹部と厚生労働省を対象に損害賠償請求(民事訴訟)、国家賠償請求訴訟(行政訴訟)を起こす決定をいたしました。

 しかしながら、12月11日に「修復腎移植を考える超党派の会」の第6回会議が急遽開催され、その会議において修復腎移植に関する厚生労働省の見解が提示されるとの情報が入りました。

 私たちは、いたずらに争うことなく、現実的な治療再開の道が開けることを最終的な目的としています。

 従いまして、今回の「修復腎移植を考える超党派の会」の内容を待ち、国家賠償請求訴訟に関する判断をすることとなりました。また、日本移植学会幹部に関しては、現在も誹謗中傷に近い発言、記事掲載などを継続しており、決定どおりに提訴を行うものとします。
 以上、皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

                            
移植への理解を求める会代表
 向 田  陽 二
修復腎移植訴訟原告団長
 野 村  正 良
by shufukujin-report | 2008-12-10 16:25 | 訴状要約
<< 訴状全文(1) 修復腎移植訴訟 訴状・要約(1)  >>