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第5回口頭弁論・詳細(2)


修復腎移植訴訟 第5回口頭弁論・詳細(2)

2010.5.11(火)


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平成20年第979号損害賠償請求事件
原 告  野 村 正 良  外6名
被 告  大 島 伸 一  外4名

準備書面(7)

2010年4月13日
松山地方裁判所民事第2部  御中

原告ら訴訟代理人
弁護士  林     秀  信

弁護士  岡  林  義  幸

弁護士  薦  田  伸  夫

弁護士  東     隆  司

弁護士  光  成  卓  明

弁護士  山  口  直  樹

 原告らは、準備書面(2)において、「修復腎移植が治療行為として妥当か否かが本件訴訟の重要な争点であり、原告らとしては、本件訴訟においてかみ合わない議論をすることを望まない」旨主張して本件訴訟の争点を提示した。そして、本件訴訟が提起されて約1年半が経過することから、修復腎移植の治療行為妥当性に関して、これまでの主張・立証を別紙のとおりまとめることとする。


別紙「修復腎移植の治療行為妥当性に関する主張・証拠対照表」  




平成20年(ワ)第979号損害賠償請求事件
原 告  野 村 正 良  外6名
被 告  大 島 伸 一  外4名

準備書面(8)

2010年5月7日
松山地方裁判所民事第2部  御中

原告ら訴訟代理人
弁護士  林     秀  信

弁護士  岡  林  義  幸

弁護士  薦  田  伸  夫

弁護士  東     隆  司

弁護士  光  成  卓  明

弁護士  山  口  直  樹

[ 被告ら準備書面(4)について ]

1 被告らは、準備書面(4)において、乙第37及び38号証を根拠として、本件訴えに法律上の争訟性がない旨主張しているので、以下、両書証に沿って、被告らの主張に理由のないことを明らかにする。

2 乙第38号証
ⅰ 乙第38号証は、東京地判平成17年10月26日の判決文である。
被告らは、同判決が、「学問上の見解の当否や評価が「不法行為に基づく損害賠償請求の前提事項となった事件に関し、被告の主張である、これ等の問題は教育の場で議論されるべきものであり、司法審査の対象として訴訟手続に於いて確定すべきものではないとの主張を採用し、『そもそもかかる事情は司法審査の対象として訴訟手続において確定すべきものではない』と明確に司法審査の対象とはならないことを判示している」と主張する。
 ⅱ しかるに、被告らの前記判決の引用は誤っている。乙第38号証判決の「事実及び理由」によれば、
ア 乙第38号証判決の事件は、大学入試センター試験の世界史の問題(同事件では日本史の問題についても争われているが、被告の引用する部分は世界史の問題について述べられている部分なので、さしあたり世界史問題についてのみ述べることとする)として、第二次大戦中の「強制連行」についての設問を出題したことについて、これが受験生である原告らに対する不法行為に該当するとして提起されたものである。
イ 同事件の原告らは、①同問題は歴史的事実でない「強制連行」を受験生に押しつけようとする思想チェックの問題であり、②かつ「強制連行」は定義が曖昧で問題自体不適切な偏向した問題なので、③その出題は裁量権の範囲を超え、原告らの思想良心・学問の自由を侵害する、と主張した。
ウ これに対し被告は、①出題は被告の裁量権の範囲内である、②「強制連行」が史実かどうかについての学問上の見解の当否や評価は「教育の場で議論されるべきものであり、司法審査の対象として訴訟手続に於いて確定すべきものではない」、と主張して、請求棄却を求めた。
エ 東京地裁は、
① センター試験の出題者には一定の裁量が認められる。
② センター試験の目的は高校段階での基礎的な学習の達成度を判定することにあり、受験生にとって公平かつ公正に実施されることが求められているので、その目的に反するような不合理な問題作成をした場合には、裁量の範囲を逸脱したものとして違法性が認められる。
③ 「強制連行」は多数の高校教科書で記述されている。本件出題は、受験者が教科書等を用いて学習した知識・理解の程度を判定するべく作成されているにすぎないから、裁量権の逸脱があったとは認められず、センター試験の目的に反する設問ということはできない。
④ 本件出題の適法性を検討するにあたって、上記教科書の記載内容を離れて、「『強制連行』が史実か否かといった学問上の見解の当否や、評価について検討する必要はないし、そもそもかかる事項は司法審査の対象として訴訟手続において確定すべきものでもない」。
⑤ 原告らが本件出題に戸惑いあるいは不快感を抱いたとしても、それは単なる主観的感情であり、金銭をもって償われるべき権利・法益の侵害にあたらず、原告らの思想良心・学問の自由を侵害するものでもない。
として、原告らの請求を棄却した。
 ⅲ 要するに、乙第38号証判決は、①「『強制連行』が史実でない」という学問的な評価を前提として出題が裁量権逸脱であるとする原告らの主張に対し、②センター試験の「受験者が教科書等を用いて学習した知識・理解の程度を判定する」という目的に照らして裁量権逸脱の有無を判断し、③「強制連行」の学問的当否・評価については検討の必要がなく、かつそれは訴訟手続で確定すべきことではない、と判示したものである。そして、同訴訟では被告は請求に争訟性がないとして却下を求めてはおらず、東京地裁判決も請求に争訟性があることを前提として、「センター試験の目的に反するような不合理な問題作成をしている場合には違法性が認められる」旨判示したうえで、本案の判断をしている。
ⅳ 本件において原告らが判断を求めているのは、準備書面(5)でも主張しているとおり、「修復腎移植の科学的適否」そのものではなく、「修復腎移植を攻撃するために被告らが行った行為が不法行為に当たるか否か」である。原告らは、被告らが修復腎移植を攻撃するために、真実に反する発言等をした、と主張しているので、被告らの発言が真実に反するか否かを判断するについて「修復腎移植の科学的適否」(及びそれについての被告らの認識)は重要な間接事実になるが、「修復腎移植の科学的適否」自体は要件事実そのものではなく、また必ずしもその論理的前提をなすものでもない。
乙第38号証の東京地判は、「『強制連行』が史実か否か」という学問的な評価は、当該事件においてはセンター試験の目的に照らして問題出題の裁量権逸脱の存否を判断するための要件事実ではなく、またその論理的前提をなすものでもないと解して、請求に争訟性があることを前提にして本案の判断をしているものである。
従って、上記東京地判は、①被告らの主張の根拠になるものでないのみならず、②むしろ、「『修復腎移植を攻撃するために被告が行った行為が不法行為に当たるか否か』を判断するについて、『修復腎移植の科学的適否』は、重要な間接事実ではあるけれども、要件事実そのものではなく、また必ずしもその論理的前提をなすものでもないから、訴訟要件とは関係がない」とする原告らの主張を支持するものと言える。

2 乙第37号証について
 ⅰ 乙第37号証論文は、91Pにおいて、
ア 東京地判昭和23年11月16日(学位請求の取扱いにかかわり名誉を毀損されたとして謝罪文の掲載等が請求された事例)が、原告が被告の「回答又は答弁によって不快の念を生じたとしても、それは学問上の見解の相違から生じたに外ならず、被告等が原告の名誉を毀損したことにはならない」。もし特定の学説上の見地から「右処置の当否を判断するとすれば必然的にそれぞれの学説の方法的内容的当否の審査を必要とし裁判によりその学説の当否優劣を決定する結果を招来する。斯かることは単に妥当でないのみならず裁判所の審査権限の範囲外に属する」(被告らが準備書面で引用しているのは、乙第37号証論文の筆者が引用する東京地判の判決文の文章である)として請求を棄却したことに触れて、
イ 「不法行為に基づく損害賠償請求の成否を決するための前提問題としてその争点が提示されているという場合には、むしろ、この②の要件にかかわる問題として処理すべきことになるであろう。」と述べている。
 ⅱ ここで触れられている東京地判昭和23年11月16日は、掲載されている「行裁月報」が地裁資料室にも存せず、ネット上にも掲載されていないので、その事案・判断の全容を知ることができない。(被告らには、間接的にでも判決の文章を引用する以上、判決全文を提出していただきたいものである。)
   しかしながら、請求された事項が不法行為に基づく謝罪広告の掲載であったこと、判決の結論が請求棄却であって却下ではないことに徴すれば、乙第37号証判決と同様、請求に争訟性があることを前提として、本案の審理判決がなされたものであることは確実と推定される。かつ、乙第37号証論文の筆者も、当該判決の「請求棄却」の結論自体を非難しているとは見えない。(学位請求の取扱いにかかわる「回答または答弁」が、学説の当否にかかわりなく名誉毀損の不法行為を構成することはありえないことではないから、当然ではある。)

3 以上のとおり、乙第37・38号証によって本件請求に争訟性がないことが裏付けられるとする被告らの主張は、それ自体誤りである。争訟性がないとして被告らが引用した判例がいずれも争訟性を認めていることからも、被告らの主張はすでに破綻している。

  なお、被告らには今後、判決等を引用するにあたっては、極力原文により、かつ原文の趣旨に忠実にすることをお勧めしたい。御都合次第に引用していては、引用者の品性もしくは能力を疑われる可能性があるのみならず、よほど本案の審理に入られたくないのかな、という疑念すら抱かれかねないからである。
by shufukujin-report | 2010-06-11 22:35 | 第5回口頭弁論詳細(2)
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